臨床獣医学、血液内科学
理科、生物学
「教授の授業」取材班は、岐阜大学の鬼頭克也先生の研究室を訪問しました。「獣医師が社会のどんなところで働いているか知って欲しいと思います。動物病院のお医者さんだけではないですよ。」と鬼頭先生。
鬼頭先生の専門は「(動物の)血液内科」です。大学付属動物病院では院長を務め(~2011年3月)、街の動物病院から紹介されてきた犬や猫を診療しています。
そうですね。獣医師になりたくて入学してくる人は、動物好きな人が多いですね。僕の場合は、高校のときに自分で飼っていた猫が病気になって、当時は分かりませんでしたが、今思い返すと「肛門脱」という病気であったようです。とてもつらそうなので街の獣医さんに連れて行ったのですが、ろくに診ることもしないで、「これはもうダメですよ」と言われてしまいました。そういうものなのかなぁとは思ったものの、もうちょっとなんとかすることができるんじゃないか、治せるんじゃないかと思い、それで獣医師になろうと思いました。
大学の獣医学課程は人気が高く、入学するには入試でよい成績をとらなければなりません。獣医学課程を受験する生徒さんたちは、目的意識をしっかりともち、獣医師とか獣医学とかについて事前に調べている子が多いですね。でも時には、「成績が良いから」と、高校の先生に勧められて受験し、獣医学のことを何も知らずに入学してくる子もいます。しかし、そういう子は入学後にドロップアウトしてしまうことがあります。学力があって、せっかく難関を突破したのに、獣医師に向かない人はいます。
獣医学課程の面接試験で志望動機について質問すると、多くの受験生が「動物の命を救いたい」と言います。しかし、獣医学教育では、動物の死をさけては通れません。動物の死に直面できない人、死をどうしても我慢できない人には向きません。実際に実習などで動物の死に接したときに、「思っていたことと違う」、「もう耐えられない」となってやめてしまう人もいるのです。面接では、「動物を安楽死しなければならないことがあったらできますか?」と尋ねることもあります。
自分一人で乗り越えなさいというのではなく、入学後最初に実習で動物に触れるときに、動物倫理について学び、実際に動物実験を経験します。この授業を体験した後に、学生に動物の死についてアンケート調査をすると、この授業が「役に立った」とは書いてありますが、「考えが変わった」とか、「どんな動物実験でも大丈夫」とは、なりません。みんな、悩んで、自分で理解して成長していきます。
動物病院で診療に携わっているので、動物の病気を治すことができたとき、とくにもうだめかもしれないというような命が救えたときに、良かったなぁと思います。また、臨床研究が進んで、いろいろな病気の謎が解けたときには感動します。そして、これは大学人としてですが、卒業生が獣医師になり、社会で活躍する姿を見るのも嬉しいですね。多くの卒業生が立派な獣医師になり活躍していますよ。
獣医学課程は、「獣医師」という専門職業人を養成する実践教育の場です。6年間の課程で履修する科目の多くは必須科目で、修了すると獣医師国家試験を受験することができます。僕の授業は寄生虫病学と血液内科学という臨床科目なので、特に実務的な内容になります。でも、疑問を持つことや論理的に考えることの大切さは伝えたいと思っています。たとえば、フィラリアという寄生虫がなぜ血液中に寄生しているかなど、事実として受け入れるのでなく、一度は疑問に思ってほしいのです。考えれば考えるほどさらに疑問がわいてきます。また、血液細胞によって動物の体がいかに巧妙にコントロールされているかなど、生命の魅力も伝えたいですね。
岐阜大学応用生物科学部獣医学課程へ進学してください。一度大学を卒業して社会経験を積んだ後に獣医師を目指して編入学する人もいます。詳しくは、参考リンク先等をご確認ください。
■このページの情報は、2009年11月の取材を元に作成された情報です。
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勉強ではありませんが、趣味をもつこと、何でもいいから熱中できることを見つけてください。僕は30歳を過ぎてから夏山に登るようになり、歳を重ねるごとに夢中になっています。毎年5月のGWに三重県の鈴鹿山脈に登り、7~8月には3,000m級の山を2~3日かけて縦走します。日頃の運動不足で登るときは大変苦しいのですが、頂上に着いた時の達成感は何事にも代えられない気持ちのいいものです。山に入り、雲上人となって絶景を打ち眺め、自然とふれあうときには仕事のことを一切忘れ、気持ちをリフレッシュすることができます。
「獣医師」と言えば、「動物のお医者さん」を思い浮かべる方が多いと思います。動物の健康を守るイメージの強い「獣医師」ですが、多くの「獣医師」は人の健康を守るための仕事にも携わっています。例えば、鳥インフルエンザや口蹄疫のニュース映像の中に、白い服を着て消毒をしている人たちがいましたが、彼らの中には獣医師がいます。獣医師は、「動物のお医者さん」として動物の健康を守るだけでなく、人獣共通感染症の防疫あるいは食品衛生や環境衛生を監視する仕事に従事して人の健康保持にも深く関わっています。
獣医師の職域はとても広く、日本獣医師会のWEBサイトにも紹介されていますので、ぜひご覧になってください。多くの人に、獣医師が社会の中で、実に多様な職務に就いていることを知ってもらえると嬉しいです。
「僕はスポーツ選手になりたいから勉強しなくていいよね?」って言われたら、「確かにそうかな」と思いつつも、人間として最低限の教養を身につけるには、やはり勉強が必要だと思います。「算数が将来の夢にどう関係するの?」と疑問に思うこともあるでしょう。でも、勉強は「頭の訓練」として必要です。また、新しいことを知ったときに喜びを感じませんか。受験勉強に限って言えば、目的達成の手段であると、割り切ることも必要かなと思います。
中部地方で唯一の大学附属動物病院である岐阜大学応用生物科学部附属動物病院は、教育、研究、診療の3本を軸に、動物と人の福祉に貢献することを理念としています。