食品流通工学、ポストハーベスト工学
理科(生物50%+化学30%+物理20%)
「教授の授業」取材班は、岐阜大学の中野浩平先生の研究室を訪問しました。
中野先生の専門は、一言でいうと「流通」。「教授の授業」取材班は、スーパーマーケットに並んでいる野菜は、収穫してからの日数が短いかどうかが、新鮮かどうかの決めてだと思っていました。しかし、「鮮度」は時間軸だけの問題ではないのでした。
いいえ。「流通」といえば、まず社会学的な仕組みや「流通経済」をイメージする人が多いかもしれませんが、僕が専門にしているのは、「流通」の中でも、モノ(野菜や食品)の視点で見た「流通」です。ヒトの視点で見た「流通」ではなく、モノそのものを見ていきます。「流通」という言葉は幅広いので分かり難いですね。大学の中には、農学部の中の農業工学や園芸学の流れの一つとして設置されているところが多いようです。ただ、「品質保持」「物流管理」を専門にやっているところは、少ないかもしれません。学生が、この研究分野に入って、学会に行くと、意外と少ないなぁと思うようです。
農家がすごく上手に、美味しく栄養いっぱいのものを作ったとしても、流通上の取扱いが悪ければ、その良さはどんどん減ってしまいます。僕の研究は、収穫したものが持っている良さや生産者の思いを、そのまま消費者に伝えるためにあります。
しかし、分野の研究者が少ないので、なかなか技術や仕組みが増えていかず、また、鮮度保持の考えが均一に普及しているとは言い難いのが現状です。たとえば、市内のスーパーマーケット数10店で、ホウレンソウを買ってきて鮮度を計る、という授業を行うことがあるのですが、ビタミンCの数値が倍ほども違うことがあります。ここには、鮮度管理の差が出ています。皆さんは、同じ市内で買える同じ野菜なら、ビタミンCがきちんと保持されている方を買いたいと思いませんか?値段も、そんなに違いません。
はい。消費者は、必ずしも安いものばかりを求めているわけではないと思います。鮮度管理への意識が高い産地や店舗が報われるようにしたいですね。消費者にアピールできるマークを普及させるなど、こちら側から仕掛けていかないといけないと考えています。
僕は最初、シミュレーションという世界に魅かれました。大学生のころは、ロールプレイングゲームが流行っていて、僕も楽しんでいたのですが、シミュレーションっていう世界は、「神様の手口を見れる」と言うんでしょうか。計算式ができあがれば、ひとつ数値を変えるだけで、実験しなくても結果が出てくる。もちろん、その計算式をつくるまではなかなかうまくいかないんですが。計算ミスもあれば、学問的に間違っているかもしれないですし。しかし、最後にピタリと合うという経験をすると、ゲームの面白さを超えて、夢中になっていました。
野菜は、収穫後も生きてます。赤ちゃんを扱うように大切に扱ってください。パソコンやテレビのような工業製品の流通と生鮮食品の流通は、根本的に違います。パソコンなら流通中に処理速度が遅くなったりしませんが、野菜の場合は、間違いなく「(栄養素などが)減って」いきますし、流通前の段階でも品質が既に異なっています。収穫したものが運ばれている間には、いろいろな人間が介在していて、いろいろな思いや技術が存在しています。「流通」は、「生産者の思いを消費者へ伝える」という大きな役割を持っています。
岐阜大学 応用生物科学部 応用生命科学課程へ進学してください。
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■このページの情報は、2009年12月の取材を元に作成された情報です。
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スーパーマーケットの生鮮食品棚の陳列を意識的に見てください。そこには、いろいろな品質保持のテクニックがあります。何気ない包装に工夫があります。どんな工夫がされているか考えてみてください。輸入品と国産品の値段の違いも注意して見てみましょう。
コンビニエンスストアでは、ポテトチップスなどの加工食品の「表示」を見て、どんなルールになっているか考えてみましょう。また、「表示されていない」情報にも気づいてください。たとえば、「製造日」は表示されていますか?。表示されていないものは「なぜ表示されていないのか」を考え、調べてみてください。
疑問に思ったことは、頭でっかちにならずに、すぐ行動にうつしてください。物事を慎重に考えるばかりではダメです。スーパーマーケットで商品のサンプリングをするときも、とにかくやってみる。そこから見えてくることがあります。学生のうちは、とにかくやってみる。
現在の流通は、鮮度保持に関してでさえも、基本的に効率主義になっています。あまり、食品そのもののことが考えられていません。しかし、これから先、増加していく安い輸入品に価格競争で勝つことはできるでしょうか?また、食の安全性、自給率を保てるでしょうか?いま、日本人がもともと持っている細やかさを活かし、効率優先主義から品質優先主義へ、物流のシステムを考えなおす時が来ていると思います。品質優先主義になれば、日本の農業や食生活はもっと健全になるのではないでしょうか。コスト意識も大切ですが、品質への投資をすることで、もっと農家や産地が稼げる体質になれると良いと思います。値段が高くても、安心・安全なものを求める消費者は存在しています。もちろん、全てをそうしてしまうことは求められていませんが、一所懸命やっている農家や流通には、相応の見返りを。農家や流通の頑張りを、しっかり消費者に届ける仕組みづくりが必要ではないでしょうか。
僕たち専門家は、産地や流通の頑張りを「保証」できる仕組みを作ろうと努力していますが、一方で、消費者には、「自分の舌を信じる」ことも忘れないでほしいと思っています。ニュースで「ブランド偽装」が話題になったりしていますが、保証されているという「マーク」とは別に、自分の舌の感覚も大切にしてください。